「カリガリ博士」が公開された1919年は、ヴェルサイユ条約が締結された年であり、主権在民などを掲げたワイマール憲法が公布されたのもこの1919年である。
よく、「カリガリ博士」はワイマール時代のドイツそのものだと言われるが、実際は微妙にずれているのである。
1921年には、巨額の賠償金と領土の割譲がかせられ、1923年にはハイパーインフレが発生、ヒトラーがミュンヘン一揆、フランスがルール工業地帯を一時占領する。
こう書くと、混乱を極めた不幸な時代のように見えるが、ワイマール共和国の時代はドイツが科学・文化で最高水準に達した時代でもあった。
「カリガリ博士」はそんな奇妙な時代に登場したのである。
ヒトラーが敗北した後、この映画は未来のドイツを暗示していたとか言われたが、監督ロベルト・ヴィーネは何も語っていない・・・